<長期の資産運用では複利効果がカギに>
「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」(アルベルト・アインシュタイン博士)――。
天才物理学者で相対性理論など数々の偉業を残し、ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタイン博士だが、人類最大の発明に挙げたのは、金融における複利効果だった。
もともとの元本に利息を加えて、新しい元本として再投資していく複利は、長期投資により、利息が利息を生み、雪だるま式に資産を膨らませる効果を持つ。一方、単利は利息を受け取り、元金に再投資しない。
例えば、初年度に100万円を投資して、年率10%の投資収益があった場合、単利と複利では、いくらになるか試算して比較してみよう。1年目はいずれも110万円で変わらないが、30年目には単利が400万円に対して、複利は1750万円に増え、4.4倍もリターンが大きくなる。
初年度 | 1年目 | 5年目 | 10年目 | 20年目 | 30年目 | |
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単利 | 100万円 | 110万円 | 150万円 | 200万円 | 300万円 | 400万円 |
複利 | 100万円 | 110万円 | 160万円 | 260万円 | 670万円 | 1750万円 |
差 | (1.1倍) | (1.3倍) | (2.2倍) | (4.4倍) |
株式市場で、複利効果を活用するには、長期間にわたって、株価の値上がり分を売却・現金化せず、配当を再投資することが資産額を大きく増やす方法となる。
長期になればなるほど、複利効果が増し、投資コストを抑えられ、暴落時の悪影響を吸収できるため、保有資産の値上がりと配当によって、資産が拡大することが期待できる。ただ、長期保有でも売買頻度が多い場合は、手数料や税金などのコストが高くなり、投資収益(リターン)を圧迫する。
投資収益は、資産ごとに異なり、株式・債券などの伝統的な資産のほか、不動産や商品などを含む非伝統的資産へ投資するオルタナティブ投資などにも、複利は有効な運用方法だ。
ヘッジ・ファンドは、現物の空売りや先物・オプション・スワップなどデリバティブ(金融派生商品)などを用いてヘッジ機能(値下がりリスクを回避する手段)を組み入れ、市場の方向性に依存しない運用益の確保を目指すものが多い。
またヘッジ・ファンドは、借り入れなどを利用して自己資金のリターンを高めるレバレッジを掛けて運用するため、一般的にハイリスク・ハイリターンと見られている。
しかし長期運用による複利効果を利用すれば、金融市場の変動にもかかわらず、比較的、安定したリターンを目指すことができるだろう。
富める者と貧しい者の差が広がる格差社会を嘆く声が強まっている現代社会の中で、アインシュタイン博士が掲げた人類最大の発明である複利を利用した投資・運用をまず試してみることが求められているのではないだろうか。