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2022/02/18
今注目の投資戦略
新型コロナ禍でのヘッジ・ファンドのリスク管理 ―ドローダウン・リカバリーに注目―

<新型コロナ禍でのヘッジ・ファンドのリスク管理>

新型コロナ・ウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)やウクライナ情勢などを背景に、インフレ高進への警戒感が強まる中、米連邦準備制度理事会(FRB)など欧米の主要中央銀行は、金融引き締め姿勢を示している。足下で金利は上昇傾向、株価は調整局面を迎えており、過剰流動性相場の終焉に備えることが必要だ。

ヘッジ・ファンド投資に際して、運用資産が目減りしても、夜ぐっすり眠ることができるか。投資家は、どの程度まで含み損を抱えても心理的な余裕を保てるのかなど、リスク許容度を認識し、リスク管理を徹底することが重要だ。

ファンド・マネジャーに、知力、体力だけでなく、経験や精神力が求められるのは、金融市場の乱高下によるストレス、不安、動揺といった心理状態が大きな判断ミスにつながる危険性をはらむからだ。

市場がショックを受けて暴落する時、パニックに陥って底値で投げ売りに走れば、損失が確定し、仮にその後、回復局面になった場合に戻りを享受できなくなる。半面、許容度を超えたリスクを抱えたまま、元本割れで塩漬けを続ければ、いずれ退場に追い込まれてしまう可能性が高い。

新型コロナ・ウイルス禍などによる不透明感から市場の変動が激しくなれば、ヘッジ・ファンドにとって、1つの判断ミスが大きな損失となり、運用成績の悪化、解約、撤退へとつながるため、リスク管理が不可欠だ。

<リスク管理指標ドローダウン・リカバリーに注目>

ポートフォリオのリスク管理の1つとして、下落局面からの回復の速度、程度、期間などを表す「ドローダウン・リカバリー」という指標がある。

ドローダウンとは、株式・FXなどのシステムトレードにおいて、評価損(損失)が発生し、資産総額が減少することを言い、集計期間内の最大利益(累積利益)のピークからの下落幅(下落率)を意味する。

ドローダウンの期間を短く、小さくすることがファンドにかかるストレスを少なくし、安定的な長期運用を可能にする。

ドローダウン・リカバリー2.png

(出所:くにうみAI証券作成)

特定の期間に発生したドローダウンの中でも、最も値が大きいものを「最大ドローダウン」と呼び、システムトレード戦略を採用した際、過去に最大どれほど投資額の落ち込みがあったかを示す。「最大ドローダウン」が大きい場合は、ポジションを削減したり、ストップロスを設定することにより、一定期間の損失を適切に抑えることができる。

また、相場の底からの回復状況を示す「ドローダウン・リカバリー」を活用すれば、全体的な収益安定と戦略的なリスク管理に有効だ。

一般的には、ドローダウンが30~35%を超え、ドローダウンからの回復期間が18カ月を超えると許容できなくなるという。

ヘッジ・ファンドでは、従来の株式・債券との相関係数が低いオルタナティブ(代替)資産へのポートフォリオ配分、デリバティブ(金融派生商品)などを活用したリスク・ヘッジ手法、時間軸・地域・戦略の分散などによって、ドローダウンを抑制し、短期間に速やかな回復を図ることを目指すものが多い。

ジャーナル・オブ・オルタナティブ・インベストメンツ誌によると、「最近では、2020年のパンデミックの間、ヘッジ・ファンド投資家に適度なドローダウンのメリットがもたらされた。ただ、以前よりもはるかに少ないものだった」という。

リスクや下落に対する耐性が高ければ、金融危機時にも大きな損失を回避し、市場で生き残ることができる。収益性という観点から見れば最良のファンドでも、リスクや信頼性という観点から見れば最低のファンドになってしまうこともあり得るため、投資家は多様な評価方法を持つことが肝要だ。

リスク許容度は、投資家の資金力、運用期間、運用方針・体制などによって異なる。ドローダウンが大きく長期に及ぶと撤退リスクが高まることから、ドローダウン・リカバリーなどの見極めが求められる。結局は、無理をせず、冷静に適切な正しい判断を下すことが、投資で成功する秘訣ではないだろうか。

参照:
Hedge Fund Alpha: What about Drawdowns? | The Journal of Alternative Investments (pm-research.com)
『ドローダウン』とは?その意味とトレードでの効果的な使い方 | FXの読み物 (fx-mono.com)

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