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2022/04/08
はじめてのヘッジ・ファンド
ロシア・ウクライナ戦争下で投資機会を模索 ―不安定な政治・経済情勢の中でのヘッジ・ファンド投資―

<リスク回避の巻き戻し続くか>

ロシアが2月24日にウクライナへ軍事侵攻してから約1カ月半が過ぎ、激しい戦闘が続く中、金融市場では、リスク回避の動きが一服しつつある。当初、ロシアやウクライナなど中東欧諸国の株価や通貨は急落し、商品市況は急伸した後、ロシアとウクライナの停戦交渉を受けて、株価や通貨は小反発、原油など商品市況は小反落し、リスク回避の巻き戻しに転じた。ただ、こうした動きが続くかは、停戦合意に至るのかが鍵を握るだろう。

ロシアとウクライナの停戦交渉をにらみ、投資機会を模索する動きは一部で広がっている。両国が歩み寄り、融和姿勢を示せば、相場の反転を促すだろう。ただ合意期待でリスク回避の巻き戻しが続くかは、相互不信を乗り越え、世界平和を取り戻せるか次第かもしれない。

多くの投資家が、「過去最安値の底値で買い、過去最高値の天井で売れば、儲かるはず」と考えるが、実行は難しい。大勢順応型の集団心理では、通常は安値圏で弱気、高値圏で強気になり、逆の動きになってしまうからだ。地政学的リスクが懸念される情勢下では、伝統的な株式・債券相場との相関が低い、ヘッジ・ファンドを見直す良い機会にもなりそうだ。

<ヘッジ・ファンドは概ね底堅く推移>

ロシア・ウクライナ紛争は、インフレ懸念、エネルギー危機、地政学的・政治的な混乱を激化させ、投資家心理を押し下げた。2022年に入り、主要な株価指数や債券指数は、いずれも年初来でマイナス圏に沈む中、多様な戦略・手法を駆使するヘッジ・ファンドは、分散効果を発揮し、ばらつきは大きいものの、概ね底堅く推移している。

マルチ戦略ファンドは、市場の中立性と厳格なリスク管理を維持しながら、資金を迅速かつ効率的に配分することができる。また長期的な観点から、現在は、イベント・ドリブン戦略や株式ロング/ショート戦略へ参入する好機と思われる。急変しやすい市場環境では、柔軟で機動的な資金配分が必要だ。

<不安定な地合いが続く市場>

停戦交渉が双方の納得いく形でまとまり、実効性が確認されれば、市場は安堵感から落ち着きを取り戻すだろう。半面、プーチン大統領は核兵器を含む核抑止部隊を高度警戒態勢に置くよう命じており、交渉が決裂して戦闘が拡大・長期化すれば第3次世界大戦や核戦争に向かうリスクが意識されるだろう。再び株価・為替は下値を試し、商品市況は一段高を試す可能性があり、市場の混乱が激化するのではないか。

為替、株式、債券相場に加え、商品市況も変動が激しく、不安定な地合いが続いている。ロシア通貨ルーブルは米ドルに対して3月7日に一時1ドル=150ルーブルを超え、過去最安値を付けた。2022年に入り下げ幅は50%超に達した。

米ドル・ルーブル相場の推移

米ドル・ルーブルのチャート.png

(出所:QUICK

一方、天然ガス、原油、パラジウム、ニッケル、小麦などロシアに依存する資源・農産物価格は高騰している。ロンドン金属取引所(LME)は3月8日、価格が2営業日で一時250%急騰したニッケル取引を停止した後、取引停止までの数時間の約定を全て取り消した。

株式取引を停止していたモスクワ証券取引所は3月24日、約1カ月ぶりに取引を再開している。

<対ロシア金融・経済制裁で不透明感が増大>

市場の動揺の背景には、欧米先進国によるロシアに対する金融・経済制裁措置や、ロシアの債務不履行(デフォルト)懸念がある。

米国、英国、欧州、カナダは、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意、ロシア中央銀行の外貨準備使用を制限した。また国際決済銀行(BIS)はロシア中銀の参加資格を停止した。さらに欧米は4月6日、主要7カ国(G7)や欧州連合(EU)と協調して追加制裁措置を発表している。

先行き不透明感が強く、市場が波乱含みの中、一般投資家は動きづらく、慎重な行動が求められている。市場の状況の影響を受けにくく、リスク・ヘッジしながらも積極的な運用を行うヘッジ・ファンドに注目が集まりやすいだろう。

参照:
ウクライナが「中立化」提示、プーチン氏には受け入れ困難な内容も...予断許さぬ停戦交渉 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
ルーブル過去最安値更新 高まるデフォルトへの懸念 (2022年3月8日) - エキサイトニュース (excite.co.jp)
ニッケル急騰後の混乱で金属トレーダー動揺、LMEの暗黒時代を想起 - Bloomberg
BIS、ロシア中銀の参加停止 西側の制裁に対応 | Reuters
ロシア最大手銀行の資産凍結へ - Yahoo!ニュース

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