<デジタル通貨・暗号資産への投資、中国やカンボジアなどアジア新興国が有望>
一般市民による銀行口座の保有率が低いことに加え、銀行の店舗・ATM(現金自動預け払い機)などが地方にあまり普及していないことを逆手に取って、中国やカンボジアといったアジアの新興国が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)や暗号資産といったフィンテック分野で躍進している。
世界4大会計事務所のひとつである、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2021年4月に発表した「中央銀行デジタル通貨(CBDC)グローバル・インデックス(第1回」)」報告書によると、一般市民・法人が保有可能な「リテール型(小売決済型)CBDCプロジェクト」では、2位にカンボジア、3位に中国が入った。
グローバル・インデックスは、中央銀行デジタル通貨の普及に関する各中央銀行の成熟度を測定するために作成されたものである。一般市民・法人が保有可能な「リテール型CBDCプロジェクト」と、銀行など金融機関の間でのみ使用できる「ホールセール型の銀行間CBDCプロジェクト」の成熟度ランキングを示している。
リテール型では1位がバハマ、2位カンボジア、3位中国、4位ウクライナ、5位ウルグアイ、6位エクアドル、7位東カリブ諸国連合、8位スウェーデン、9位韓国、10位トルコとなった。
2位となったカンボジアでは、カンボジア国立銀行(NBC)が2018年6月にデジタル通貨の調査を開始。分散台帳技術(DLT、ブロックチェーン)ベースの銀行間決済システムであるバコン・プロジェクトは、2019年7月に試行され、10月に正式に始まった。
2020年時点で、11の国内商業銀行と支払い・決済業者を連携させている。NBCは2019年10月からマレーシア拠点の銀行メイバンクとの国境を越えた取引のためのデジタル・ウォレット実験を開始した。マレーシアで働くカンボジア人は、以前よりも非常に低い手数料でカンボジアへ資金を送ることが可能となった。
カンボジアでは、大半の一般市民が銀行口座の使用に慣れていない半面、携帯電話・スマートフォンなどの普及率は高く、バコンはフィナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を向上させることを目指している。
金融包摂とは、市民が金融サービスを容易に利用できるようにすることを指す。具体的には銀行口座を持たない人々や、銀行の支店やATMなどが少ない地域に住む人々にも、金融サービスを享受できる機会を平等に提供することを意味する。
3位の中国では、2014年に小売CBDC開発を開始し、2020年4月に中国はデジタル通貨を試験的に導入した世界で最初の主要国となった。4つの主要都市で実施されたパイロット・プログラムは、商品の代金支払い時にデジタル人民元が機能することを示した。
先進国では、銀行の店舗やATMが全国各地にあり、一般市民のインフラ(社会基盤)として十分に利便性を提供している。しかし伝統的な金融サービスが整っていることが逆に、時代遅れのレガシーシステムとして、携帯電話・スマートフォンなどを使った新しい金融サービスへの転換や波及を遅らせる構図になりかねない。日本でも、地方で銀行の店舗・ATMが徐々に減っていく中で、将来は携帯電話・スマホを使った決済・送金などが一段と広がる可能性がある。
一方、銀行間ホールセール型CBDCでは、1位がタイ、2位香港、3位シンガポール、4位カナダ、5位英国、6位フランス、7位南アフリカ共和国、8位欧州、9位アラブ首長国連邦、10位日本と続く。政府・中央銀行が主導するプロジェクトが推進されている形だ。
PwC社共同経営者・世界暗号資産リーダのアンリ・アルスラニアン氏は、「CBDCは、一般市民が初めてデジタル形式で中央銀行の通貨にアクセスできるようになるため、一般市民が最大の受益者となるだろう。通貨の進化という点では大事件だ」と説明した。
<暗号資産ヘッジ・ファンドの運用資産規模は約38億米ドルに>
中央銀行デジタル通貨の進展のみならず、民間企業が発行する暗号資産にも、投資家の関心は高まっている。
PwC社がオルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション(AIMA)などと協力して調査した「2021年暗号資産ヘッジ・ファンド報告書(第3回)」によると、暗号資産ヘッジ・ファンドの全世界の運用資産規模は2020年に合計で約38億米ドルに達し、前年に比べて20億米ドル増加した。
運用資産額が2000万米ドルを超える暗号資産ヘッジ・ファンドの割合は2020年に46%と、前年の35%から拡大した。2020年の暗号資産ヘッジ・ファンドのリターン中央値は128%増加となり、2019年の30%増加から大幅に伸びている。
最もパフォーマンスが良かった戦略は、「任意のロングオンリー」で294%増加、次いで「任意のロング・ショート」が129%増加、「マルチ戦略」が114%増加、「クオンツ」が72%増加だった。
暗号資産ヘッジ・ファンド取引の大半はビットコイン(92%)、次いでイーサリアム(67%)、ライトコイン(34%)、チェーンリンク(30%)、ポルカドット(28%)、アーベ(27%)となった。
従来型のヘッジ・ファンドと同様に、暗号資産ヘッジ・ファンドの所在地は、1位がケイマン諸島(34%)、2位が米国(33%)、3位がジブラルタル(9%)。暗号資産ヘッジ・ファンド・マネジャーの所在地は、米国が43%、英国が19%、香港が11%だった。
2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、世界中の主要な中央銀行が金融緩和政策に踏み込み、潤沢な投資資金が金融市場に流入した。
しかし日本の金融機関の預金金利は0%近傍で推移し、魅力的な投資先がなかなか見いだせないのが現実だ。また新型コロナウイルスの感染拡大は、家計・消費者や企業にとって行動制約や様々な産業への影響といった経済的な打撃につながっている。
先行き不透明感が強く、投資先の多様化ニーズが強まる中、デジタル通貨・暗号資産といったフィンテック分野へも熱い視線が集まっている。
くにうみAI証券では、海外の富裕層に選ばれているヘッジ・ファンドを使った資産運用を日本の投資家に提供している。
参考文献:
pwc-cbdc-global-index-1st-edition-april-2021.pdf
3rd-annual-pwc-elwood-aima-crypto-hedge-fund-report-(may-2021).pdf