<プライベート・エクイティ(PE)・ファンドの潮流:流通(セカンダリー)市場で次世代ユニコーン企業を物色>―インターネットなどの活用でより身近な金融商品に―
最近、株式・債券などの伝統的な資産市場が不安定化する中、オルタナティブ(代替)投資がリターン(投資収益)とリスクの両面で注目を集めている。オルタナティブ投資には、ヘッジ・ファンド、商品・不動産などのほか、プライベート・アセットへの投資が含まれる。
プライベート・アセット投資は、プライベート・エクイティ(PE)やプライベート・デットなど、未上場企業や市場で取引されていない資産クラスへ投資するものだ。
プライベート・エクイティ(PE)は、未上場企業に出資する形で投資を行う。資金調達を目的に私募形式で発行される株式、転換社債型新株予約券付社債、新株引受権付社債などによる資本参加するファンドをプライベート・エクイティ・ファンドと呼ぶ。
一方、プライベート・デットは、相対的に信用力が低い企業などに対して投資家から集めた資金をローン(融資)の形で貸し付ける債権のことだ。プライベート・デットを提供するファンドをプライベート・デット・ファンドと言う。
特にPE市場では、時価評価額が10億ドルを超え、設立10年以内の未上場ベンチャーをユニコーン(一角獣)企業と呼び、世界中の投資家から垂涎の的だ。
ユニコーン企業は、急成長を遂げ、世界的に高い評価を得ている新興企業を意味する。ベンチャー・キャピタル(VC)などを始めとする投資家から、額に一本の角が生えた伝説の生き物ユニコーンのように、非常に稀で巨額の利益を創出する潜在力を持つと期待が大きい。
米調査会社CB Insights(CBインサイツ)によると、2022年10月時点で世界中にユニコーン企業は1204社が存在し、累計評価額は合計3兆8760億ドルに達するという。Airbnb, Inc.(エアビーアンドビー)、Facebook(フェイスブック、現在メタ)、Google(グーグル)なども元はユニコーン企業だった。
PE市場で投資資金を回収するためのエグジット(出口)戦略は、新規株式公開(IPO)や買収・合併(M&A)などを通じて第3者へ株式を売却することが主流だ。もっとも市場環境の不透明感が強まる中、足元ではIPOやM&Aがやや減少しており、流通(セカンダリー)市場での売買が活発化している。
<インターネットなどの活用でより身近な金融商品に>
ある海外資産運用会社幹部は、「世界の投資・運用グループが次のユニコーンへの資金配分を望んでいる。セカンダリー市場は、非常に大きな市場に拡大している。これまでPEファンドは、プロの機関投資家向けで、新規投資のリターン面でポートフォリオへ強い圧力があった。しかしセカンダリー市場で買えば、短期間の3~5年で利回りの改善につながる」と説明した。
従来のPEファンド投資は、最低投資金額が高額なことに加え、商品性が複雑であり、通常10年前後に及ぶ運用期間中は流動性が低く、解約が困難だった。このため、機関投資家や年金基金など専門家向けの金融商品と位置付けられ、投資家は途中で換金する必要のない長期資金で投資し、長期的なリターン獲得を目指す傾向が強かった。またPE市場に関する情報は非常に限られた関係者しか得られず、排他的な性質がある参入障壁の高い業界と見られていた。
長期にわたる経営への深い関与により、運用実績は向上するものの、初期のリターンはマイナスになる可能性が高く、情報量も少なかったため、一般の個人投資家や投資初心者は手を出しづらい状況だった。
しかし最近は、こうした需要をとらえて、インターネットなどを活用し、日本国内の個人投資家に対してPEファンドの情報を提供するところも増えているようだ。
従来、多額の資金と専門的な知識・人材が必要だったPEファンド投資だが、近年は比較的少額から簡単に始めることができるように小口化・低価格化の流れが進むと見込まれており、新たな事業モデルとして柔軟で迅速なポートフォリオの資金配分が可能になりつつあるようだ。
参考文献:
The Complete List Of Unicorn Companies (cbinsights.com)
投資ファンド持ち分の流動化・2次売買 | アスタリスク (japanplacementagent.com)