プライベート・エクイティ(PE)・ファンド会社の元祖的存在とも言われるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)。
米国の大手投資銀行ベア・スターンズ出身のジェローム・コールバーグ・ジュニア、ヘンリー・クラビス、ジョージ・ロバーツによって1976年に設立された。PE、インフラ、不動産、クレジット、ヘッジ・ファンドなど多様な資産クラスの運用を行う世界有数の投資運用会社だ。米国ニューヨークに本社を構え、世界4大陸・17カ国・23都市に拠点を持つ。創立以来、40以上のファンドを組成、2021年12月時点で、650件以上のPE投資を実行し、投資総額は6750億米ドル以上に上る。
運用残高(AUM)は2022年12月31日時点で5040億米ドルに達する。PEファンドの投資先企業は127社、売上高の合計は、2022年9月30日時点で2930億米ドルに及ぶ。創立以降、2022年12月31日時点までの運用期間24カ月以上のPEファンドの内部収益率(IRR)は25.6%、純内部収益率は18.8%。同期間におけるS&P500株価指数の収益率は11.7%だった。
2002年に投資先企業の経営改善を支援するKKRキャップストーンを発足。2006年にはKKRキャピタル・マーケッツを発足し、投資先企業、特定の顧客に対して、資本市場に関する革新的なアドバイス、投資機会、資金調達などを、必要とする企業に提供している。KKRはニューヨーク証券取引所に上場(銘柄コード:KKR)しており、現在、3000人強の従業員を抱える。
レバレッジド・バイアウト(LBO)、マネジメント・バイアウト(MBO)、ベンチャー・キャピタル(VC)、グロース・キャピタルなどの様々な金融ソリューションを提供する。特にLBOでは業界先駆者と評されている。
LBOは、買収先企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に、金融機関などから資金調達をして行う買収の手法のひとつ。投資家から集めてきた自己資金が少なくても大きな資本の企業を買収できるレバレッジ・スキームであり、投資家に高いリターンをもたらすことができるため、PE業界では、よく利用される買収スキームでもある。
米国での主な取引事例は以下の通り。
- スーパー・チェーンのセイフウェイを1986年に約55億米ドルで友好的に買収し、1990年に再上場を実現
- 食品・タバコメーカーのRJRナビスコを1988年にLBOを活用して約250億米ドルで買収。同年、たばこ事業はR・J・レイノルズ・タバコとして分割され株式売却。RJRナビスコはナビスコ・ホールディングスに改称。2000年、フィリップ・モリスがナビスコ・ホールディングスを買収しクラフトフーズと合併させた。2011年、クラフトフーズは食品部門と菓子部門に分割され、ナビスコは菓子部門会社であるモンデリーズ・インターナショナルの一部となった
- 食品・化学メーカーのボーデンを1995年に買収後、ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズに吸収合併され、現在モメンティブ・スペシャルティ・ケミカルズの1部門となっている
- ホスピタルコーポレーション・オブ・アメリカ(HCA)を2006年にベインキャピタル、メリルリンチ証券、HCA創業者のトーマス・ファーン・フリスト・ジュニアと共同で、約316億米ドルで買収し非公開化。その後、2011年に再上場に成功
日本での主な取引事例は以下の通り。
- 旧カルソニックカンセイを2017年に株式公開買い付け(TOB)により約4983億円を投じて買収。同社は2018年には欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズの部品部門である旧マニエッティ・マレリを約62億ユーロで買収。両社を経営統合し、2019年に企業名をマレリと改めた。2022年再上場を計画していたが、新型コロナ・ウイルス感染症拡大などに伴う景気減速により断念。同年8月、裁判所の再生計画認可決定を経て再建中
- PHCホールティングス(旧パナソニックヘルスケア)を2014年に約1650億円で買収。その後、三井物産へ持分の一部を売却、三菱ケミカルホールティングス子会社取得に伴う株式交換などを経て2021年に上場(銘柄コード:6523、上場日の時価総額は約4000億円)
- 楽天DXソリューション合同会社と一緒に米ウォルマートから西友の株式を2021年に買収し、地域密着型の小売業者として長期的な戦略遂行を支援中
- 日立国際電気を2017年にTOBにより子会社化。2018年にKOKUSAI ELECTRICに社名変更。2022年10月、約240億円を投じて富山県砺波市に半導体製造装置の新工場建設を発表
- 2017年、日立工機を約1500億円で買収し上場廃止。2018年に工機ホールディングスに社名変更
- 日本最初のタンクターミナルを経営する会社で、石油や化学薬品などの液体貨物の運送・保管するセントラル・タンクターミナルを2021年11月に約500億円で買収し完全子会社化
- オリックスから中小企業、個人事業主、起業家向け会計業務ソフトウェアを中心とする弥生の株式を2022年3月に約2400億円で買収
- 2022年11月、上場会社日立物流の株式51%以上をTOBにより買収し、同社は2023年2月24日に上場廃止。同年4月1日付でロジスティードに社名変更
- 2022年12月、PE会社BPEA EQT(旧ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア)から医薬品の受託製造事業(CMO)の武州製薬の全株式買収を発表
参考資料:
- KKR homepage:
KKR
- スーパー「西友」を子会社化するKKRってどんな会社 2ページ目 | M&A Online - M&Aをもっと身近に。 (maonline.jp)
- プレスリリース:KKR、武州製薬の全株式を取得(共同通信PRワイヤー) | 毎日新聞 (mainichi.jp)
- 投資ファンド・KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)をわかりやすく紐解く巨大PEファンドの実態とは? - 株式投資の未来 (omnifimedia.com)
- club/2455
- KKR、武州製薬の全株式を取得_20221220.pdf
- KKR_トから西友株式取得完了_新株主は大久保恒夫のCEO_20210301.pdf
- KKR、日立物流に対する公開買付けを完了_20221130.pdf
- KKR、株式会社日立国際電気の公開買付けを完了 | KKR
- 半導体デバイス市場の拡大に対応するため富山県砺波市に半導体製造装置の新工場を建設 | News Room | 株式会社 KOKUSAI ELECTRIC (kokusai-electric.com)
- KKR、カルソニックカンセイ取得を目的とした株式公開買い付けを発表 | KKR
- KKRは17年からM&Aラッシュ:KKRが日本企業を買いあさる理由 | ビジネスジャーナル (biz-journal.jp)
- KKR、20億ドルでの工機の売却計画が行き詰まり-関係者 - Bloomberg