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2023/08/15
名門ヘッジ・ファンド会社紹介
デビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメント

ウォール街で"DK"という略称で知られているデビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントは40年もの間ヘッジ・ファンド業界で安定的な実績を積み重ねてきた米国の大手ヘッジ・ファンドである。

デビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントが創業されたのは、1983年。ニューヨークを拠点に、フィラデルフィア、ロンドン、香港、ダブリン、深圳(中国)、ムンバイ(インド)にオフィスを構え、500人以上の従業員が在籍している。創業者はマービン・デビッドソンで、創業翌年に加入したトーマス・ケンプナーが2004年に会社の代表となり、その後2020年に、20年ほどの同社でのキャリアを経てアンソニー・ヨセロフが会社を引き継いでいる。

2023年8月時点で公表している運用資産残高(AUM)は、約380億米ドル。2021年実績は、Pensions & Investmentsのヘッジ・ファンド・マネジャー・ランキングで10位。ブルームバーグのヘッジ・ファンド利益ランキングで11位。LCHインベストメンツのトップ・ヘッジ・ファンド・マネジャー・ランキングで18位と多くのランキングへノミネートされた。デビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントは常にランキング上位にノミネートされるような派手な実績を創業以来ずっと残しているという訳では決してないが、20年以上存続するヘッジ・ファンドの社数はたったの3%と言われる業界で、その2倍もの期間、顧客の資金を運用し、ランキングにノミネートされるほどの地位へ押し上げてきた堅実なヘッジ・ファンドであると評価できる。

主要な投資戦略は、ファンダメンタルズ分析とボトム・アップ・アプローチに基づくイベント・ドリブン手法。グローバル市場においてクレジットや株式、不動産などの現物資産といった、あらゆる資産クラスへの投資を行うが、合併アービトラージ、ディストレスト投資、転換社債アービトラージなど、企業イベントに注目した手法を得意とし、ファンド・マネジャーを中心に対象企業へのボトム・アップ・アプローチを用いて、収益機会を逃さぬよう要因分析を注意深く行っていく。ファンド商品は40以上と多く、その中にはマルチ・ストラテジー・ファンドやディストレスト・ファンド、インカム・ファンド、ロングターム・ファンドといった様々な投資戦略のファンドも用意している。

最大の資金を集めている旗艦ファンドはDavidson Kempner Institutional PartnersDavidson Kempner InternationalDavidson Kempner Partnersで、いずれもマルチ・ストラテジー・ファンド。2021年までの20年間の平均運用リターンは7%。2009年のリターンが20%と最大で、大きく前年を下回った年は1度だけであった。顧客は個人、銀行や貯蓄金融機関、年金基金やチャリティー基金などで、最低投資金額は200万~500万米ドルほどである。

近年でデビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントが注目を集めたことといえば、2020年に英国のヴァージンアトランティック航空への約170億ポンド(222億米ドル)の緊急融資が記憶に新しい。世界屈指の著名企業家のリチャード・ブランソンが創業した航空会社だが、世界的パンデミックにより経営難に陥ったところをデビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントが担保付き融資として資金を提供すると提案して、廃業を免れた。この件は世界中で大きく伝えられることとなり、日本でも報じられた。

世界的なパンデミックのさなか会社を40代で託されたヨセロフは、2022年、インドのムンバイにオフィスを開設し、より新しい分野への取り組みに前向きであると表明している。不動産、航空機レンタル、貨物輸送、再生可能エネルギーといった分野への関心を示しており、実際に2022年、航空機ファイナンス事業を立ち上げたり、カリフォルニアでのエネルギー産業(石油)へ大型投資したり、非常に積極的な姿勢をみせている。

40年という長い期間の中で、会社トップの引き継ぎを2度経験してもなお、実績を伸ばし続けている希有なヘッジ・ファンドであるデビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントが、この先の激しい競争の中でどのような実績を積み重ねていくのか、注目のヘッジ・ファンドである。

参考資料:

(文責:客員アナリスト 鈴木)

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