<中小型成長株が復活⁉―転換期にらむ投資戦略―>
ヘッジ・ファンド業界では、金融・経済環境の転換期には、「景気循環」という波乗りの技が競われる。金融引き締め政策から金融緩和政策へと、世の中が大きく変化する時には、新規ビジネスやイノベーションが発展する可能性が高いため、投資家はビッグ・ウェーブを逃さないように虎視眈々と好機を狙っている。
<欧米のインフレ圧力がピークアウトし金利低下局面へ転換>
欧米では、消費者物価指数(CPI)の上昇率が鈍化しており、欧州中央銀行(ECB)が6月に8年3カ月ぶりに利下げに転じた流れに続き、米連邦準備制度理事会(FRB)も近く利下げに踏み切るとの観測が強まっている。
このような流れを背景に、国際金融市場には大きな変化が生じる可能性が高い。これまで財務基盤が堅固な大型優良株に一極集中していた投資資金が、今後は金利負担の軽減が見込まれる中小型成長株へ回帰するとの思惑が浮上している。
イーグル・キャピタル・パートナーズのゼネラル・パートナーのメリル・ウィットマー氏は、バロンズ・ダイジェスト誌のミッドイヤーラウンドテーブルの中で、「景気が軟化し、インフレ率が低下しているため、金利は低下する」と予想している。その上で、「最も関心を持っているのは銘柄選別だ。潤沢なキャッシュフローを創出し、割安な銘柄を選好している」との方針を示した。
またパルナッソス・インベストメンツのCIO(最高投資責任者)のトッド・アールステイン氏も、「FRBが今年後半に利下げすれば、株価上昇に乗り遅れてきた銘柄も押し上げられる可能性がある」と指摘した。
<株式市場の銘柄選別に変化も>
特に米国市場では、長期にわたり、巨大テクノロジー企業が主要株価指数を主導してきた。GAFAM5銘柄のグーグル(アルファベット)、アップル、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトに、テスラとエヌビディアを加えた7社をマグニフィセント・セブンと呼び、世界中から投資資金を吸収してきた。
一方、資本構造がぜい弱で、資金調達手段が限られ、経営陣の能力・経験など経営資源も乏しい中小企業は、高金利状況下で債務負担が大きく、リスクが高いことを嫌気して、投資資金の回避傾向が続いた。
しかし長期にわたって出遅れていた銘柄へ乗り換えの動きが見え始め、銘柄選別にも変化が現れつつある。中小型成長株は、未来に向けて大きく成長するとの期待から、魅力的で割安な投資対象として見直し買いの対象に浮上している。欧米が金利低下局面へ向かえば、出遅れ感の強いセクターとして、ヘルスケア、生活必需品、公益事業、エネルギー、不動産などへ資金が向かう可能性がある。
成熟期を迎える大企業と異なり、時価総額が小さい伸び盛りの企業は、中長期的な成長余地が大きい。このため企業・経営者に関して徹底的に調査・研究し、未来を託す会社の分析を重視し、有望な銘柄を先回りして購入すれば、次世代の潮流に乗って大きく成長する姿を待つ楽しみにつながるだろう。
事業ライフ・サイクルの新陳代謝が進み、キャッシュフローの創出力が高まっている隠れた割安な中小型成長銘柄を慎重に選別し、中長期的な株価の上昇ポテンシャルを取り込み、金融市場環境に影響されにくい運用パフォーマンスを続けるヘッジ・ファンドに注目したい。
参考文献:
中小型株に主役交代へ、米株市場に訪れた転換期-利下げ視野入りで - Bloomberg
ミッドイヤーラウンドテーブル 48 Investment Ideas for the Rest of the Year From Our Roundtable Pros|【WEEKLY】2024年7月14日号|バロンズ・ダイジェスト (jiji.com)
ECB、金融緩和を米英に先駆け開始-追加利下げ見通しは示さず - Bloomberg
欧州中銀、政策金利据え置き、追加利下げの是非は9月会合で判断へ(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
2024年7月【米国株 ETF 11セクター比較】(好調なセクター、不調なセクターが、一目瞭然!) - 『タクドラたみ』の米国株投資 (hatenablog.com)
近づく米利下げ、マネーはどこへ 新興国や金に追い風 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
新興株16日 グロース250が続伸 「米国の中小型株高の流れ」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)