<新興(エマージング)企業への投資を効率的に行う:ヘッジ・ファンド活用術>
ロボット、月旅行、空飛ぶ車――。子供のころに読んだサイエンス・フィクション(SF)小説で登場していた「夢の世界」は現実になろうとしている。
2021年8月11日付のブルームバーグ報道によると、2024年までに「空飛ぶタクシー」の実用化を目指す新興企業の米ジョビー・アビエーションが同日、特別買収目的会社(SPAC)との合併を経てニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。2009年創業の同社は、乗客を乗せることのできる電動垂直離着陸(eVTOL)機の開発を進めており、米ウーバー・テクノロジーズやトヨタ自動車などから、これまでに7億ドル(約775億円)余りの資本を集めてきたという。
長期の成長が期待できる新興企業に早い時期に投資すれば、株価が大きく上昇して、資産の増大を享受できるほか、新時代をリードすべく夢を追う起業家への支援にもなる。成長株投資の魅力は、長期的な値上がり益が期待できることだ。
例えば米ナスダック(NASDAQ)市場は、新興企業向け株式市場でも世界最大の規模を誇り、ハイテク・IT関連企業が経済成長の源泉となり、株価を押し上げている。
(出所:QUICK)
一方で、革新的な技術やビジネス・モデルがコスト面などの問題で商業ベースの事業に至らない場合や、技術の汎用化、産業構造や消費者行動の変化によって収益につながらないといったリスクも伴う。
<新興(エマージング)企業への投資を考える>
新興(エマージング)企業への投資といえば、スタートアップの小型株式への投資をイメージする投資家が多いだろう。しかし、大型株、中型株、小型株の全ての時価総額規模(オール・キャップ)において、エマージングの言葉が当てはまる企業は存在する。様々な産業分野において事業ライフ・サイクルの初期段階にある事業を積極的に推し進める企業が、広義のエマージング企業なのである。
米国で量的緩和縮小(テーパリング)の議論が進む中で、今後は企業のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に基づいた株式の選別化が進むと見込まれる。エマージング段階の事業サイクルにある企業に対して、投資家の注目がより高まると同時に、投資家の目も厳しくなるだろう。
エマージング企業を対象としたヘッジ・ファンドの運用は、一段とポピュラーになると期待される。ボトムアップの企業分析に基づき、買い(ロング)と空売り(ショート)銘柄の入れ替えや、両ポジションのミックスを戦略的かつ機動的に変更することにより、エマージング企業への成長株投資をより効率的に行うことが可能になるからだ。株価の中長期的な上昇ポテンシャルを取り込んだ上で、下落に対する抵抗力も備えた投資戦略である。
<ヘッジ・ファンドによるエマージング企業への投資スタイル>
ヘッジ・ファンドによるエマージング企業への長期投資では、グローバルな産業セクターに分散投資することを前提に、事業ライフ・サイクルの初期段階にある株式に投資(ロング・ポジション)すると同時に、旧来の事業展開に依存する株式を空売り(ショート)する戦略を採る。基本的には長期の成長株投資戦略であるため、ロング・サイドのポジションを多く持つロング・バイアスのロング/ショート戦略が望ましい。またロングとショートのポジション比率は、投資環境に対応して機動的に変更される。
株式の選択においては、企業の財務や技術力、経営戦略など、ファンダメンタルズに関する分析が鍵となる。これに加えて消費者やユーザーの行動など、産業構造の変化を把握した上で、投資するセクターを分散させることが、アルファ(超過収益)の追求とリスク管理にとって重要なファクターとなる。
ブラックロック・インベストメント・インスティチュートは、7月に発表した2021年の市場に影響を与える3つの投資テーマとして、①ニューノミナル(経済活動再開・中期的インフレ上昇で欧州など主要国の景気敏感銘柄・地域に好機)②一線を画す中国(新興国から切り離し投資先として選好)③炭素排出ネットゼロへの道のり(グリーン経済への移行とインフラ再構築など)―を挙げ、有望な投資先としてハイテク株式、欧州株式、物価連動国債、中国債券を推奨している。
参考文献:
「空飛ぶタクシー」のジョビー、11日にNY証取上場-トヨタなど出資 - Bloomberg
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